株式会社TORICO

 「漫画全巻ドットコム」で急成長を遂げる 〜グローバル展開は台湾市場からスタート〜

 売上高が年々倍々ゲーム的に拡大している企業があるとしたら、経済が成熟しかつ景気低迷が続く中にあって、極めて異例といっても過言ではないだろう。それを実現している企業の1社が株式会社TORICOである。
 同社は「漫画全巻ドットコム」という漫画本を全巻まとめて販売している。サービスは「出前館」、「レンタルコミック」、「漫画雑誌の定期購読サービス」など、ユーザーの利便性を高めるような様々なサービスを矢継ぎ早に打ち出し、まさに同社のファンを「トリコ」にするような斬新なサービスを行っている。今回は、成長著しい株式会社TORICOの安藤社長に、事業展開や今後の抱負を取材した。
なお、以下の内容は09年9月9日に実施した取材をもとに作成したものである。

【会社概要】

企業名株式会社TORICO
所在地東京都台東区台東一丁目11番4号
代表者名代表取締役社長 安藤 拓郎
事業概要インターネット事業
URLhttp://torico-corp.com/

「『漫画』全巻ドットコム」の実質的な名付け親はタレントの中川“しょこたん”?

Question 1:
事業概要とこれまでの事業の変遷について、まずお聴きしたいのですが。

 現在のビジネスは漫画の単行本を対象とした書籍で、かつ全巻のセット販売が100%を占めています。この事業を立ち上げてから3年程度経っていますが、この間のビジネスモデルに変化はなく、スタート当初は扱う対象商品は50タイトルほどでしたが、現在はその100倍の5,000タイトルまで増加しています。
 ところで、ご質問のこれまでの変遷ですが、私自身は、商社、IT企業やベンチャー企業などに転職してきました。その中で、私の趣味だったスニーカーの製造・販売を手掛けていたときに、たまたまベンチャーキャピタルの目に留まり、支援していただいたことを機に起業に踏み切りました。
 企業を立ち上げた当初はスニーカーの販売だけをやっていたのですが、1年間の売上高はわずか50万円程度でした。これでは非常に困ったなぁと考えたとき、スニーカーやアパレルといった特定の分野に拘るのでなく、出来るだけ資金負担が少なく済み、かつ事業リスクが小さいものを手掛けていこうと方針を変えました。そこで始めたのが「マンガ全巻ドットコム」(注:現在は「マンガ」でなく「漫画」であるが、事業立ち上げ時は、カタカナを使っていたので、こちらを採用しています。)というビジネスです。

Question 2:
スニーカーの次はどうして「漫画」だったのですか?

 最初から、インターネットで本を売るという視点があったわけではないのです。週末、家で一日過ごすとしたら、漫画、DVDなどのアミューズメントと食事(お弁当やドリンクと焼酎)がセットになって届くサービスがあったら、自分なら買うな、という発想からスタートしました。ただ、いざ事業を立ち上げようと検討を始めると、お酒は扱えない、DVDなどの販売は難しいなど、対象から順に外していき、いわば消去法的に最後まで残ったのが、漫画でした。漫画の取り扱いを考えた場合、古本屋がたまたま身近にあったので、そこから仕入れて出荷すれば、在庫を抱えずに、しかも資金負担が少なく済むと考えて、漫画本の販売を始めました。 写真_1 安藤 社長

Question 3:
面白い発想ですね。

 最初は売れるとは全く思ってもいませんでしたから、せいぜい週に1セットか2セット売れればよくて、それ以上の注文があれば自分達で探せばいいと考えていました。古本屋の伝手もなく、出版業界の知識もなくスタートしたというのが、本当のところです。

Question 4:
スタートアップ時からインターネットでの販売だったのですか?

 そうです。インターネットで、「検索連動広告」を出していました。これはスニーカーを手掛けたときも同じでした。ただ、スニーカーの場合には、月の売上がせいぜい1〜2足程度だったのに対して、漫画を扱った初日から3セット程度を販売しました。この格差にビックリした思い出があります。

Question 5:
事業開始初日からの売上計上は立派ですね。その後、販売が拡大していったと思いますが、漫画の中古本の仕入れはどのようにされてきましたか?

 この事業を立ち上げた当初は、私ともう1人の創業メンバーの2人が、朝までにユーザーからのオーダーを受けた本を仕入れるために購入シートを作成し、昼間はそれを持って都内の中古本屋に必要な本を探しまわり、夜に仕入れた漫画を出荷する。翌朝は次の注文がきているので、そこでまたシートを持って都内を駆け巡る、といったところから始まりました。1ヵ月程度はこれでなんとか対応できたのですが、漫画の販売はスニーカーと違って、注文が順調に拡大してきたため、2ヵ月後ぐらいからはこのようなやり方では追いつかなくなってきました。そこで、古本屋さんに「スラムダンク30セット購入したい」とメールや電話で注文し、徐々に仕入先ルートを開拓していきました。

Question 6:
「マンガ全巻ドットコム」の名前から推察できるように、全巻の販売を立ち上げ時から行っていたのでしょうが、例えば、全巻50巻になるような漫画本の注文があった場合、中古本ですから、何巻か欠ける場合があると思います。その場合どう対応していたのですか?

 それはもう「遮二無二探す」ということしかありませんでした。どうしても見つからない場合には、やむを得ず、お客さんに例えば1ヵ月待ってもらうようなこともしていました。

Question 7:
中古本からのスタートですが、どうして新刊本を扱うようになったのですか?

 中古本は利益率が良く、当社のメイン商品として取り扱っていましたが、お客さんから新刊本がないのか?という問い合わせが多くなり始めてきました。また、中古本に対するアレルギーのある顧客も結構いますので、拡販のために新刊本の取り扱いを始めました。これまで取引のなかった取次業者も数社回り、仕入れルートの開拓に努めました

Question 8:
この頃、タレントの中川翔子さんが、ブログで御社のサイトを紹介したことが切っ掛けで「漫画全巻ドットコム」の知名度がアップし、一気にブレイクしたと伺いましたが・・・。

 その通りです。中川翔子さんがブログの中でコメントしていただいたことで、認知度は一気に高まりました。ブログは当社にリンクを張っていなかったので、読者はブログの中にあった「漫画全巻ドットコム」というキーワードで検索して、当社のサーバーにアクセスしてきました。アクセス件数はこれまでの10倍以上を超える勢いだったため、最後には当社のサーバーがダウンしてしまいました。ヤフーが行っている検索急上昇ランキングで「漫画全巻ドットコム」が第1位になるほどでしたから、実際のアクセス件数はもっと多かったと思います。ちなみに、中川さんが「マンガ」というカタカナでなく、「漫画」という漢字を使っておられたので、当社はこれを機に「マンガ」を「漫画」に変えて使用することに統一しました。ある意味、中川さんが名付け親みたいなものですね(笑)。

Question 9:
潜在的な読者層は予想を遥かに超える多さだったわけですね。

 すごく多いと感じました。漫画本をセット販売している書店はいうに及ばず、サイトでも見当たりません。今思えば、サービス提供者がいなかったことが、成長を遂げる要因の1つだったといえます。

Question 10:
中古本からスタートし、その後、新刊本も併用販売を行い、現在は新刊本のみの販売に一本化しています。こうした舵取りを決められたのはなぜですか?

 取扱高が多くなるにつれて、新刊本の比重が多くなってきました。しかも、新刊本でないと全巻取り揃えることが難しくなったのです。
例えば、今ですと、「20世紀少年」のような人気作品を中古本の市場で全巻揃えるとなると、当社は店舗を構えていませんので、必要な数を揃えることは難しく、仮に手当てができたとしても新刊本の定価と同じ程度でないと入荷できない状況です。一方、新刊ですと、出版社が増刷してくれれば、200セットとか1,000セットでも仕入れられます。見方を変えると、当社の事業規模がそれだけ大きくなってきたという証しかもしれません。このように仕入れの安定性を考えると、新刊本の方が中古本よりも分があります。
 事業を拡大していくには、出版社さんと例えば著者のサイン会を共同開催ができるなど、出版社さんとパイプを太くすることが重要だと考えています。また、ピザ宅配のピザーラ(株式会社フォーシーズ)さんやオンラインゲームのガンホー(ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社)さんなどと共同でキャンペーンなどができるといったようなメリットもあり、いろいろと考えた末に新刊本のみを扱うことに舵を切りました。

Question 11:
それはいつ頃ですか?

 2年前ごろで、中川さんのブログに掲載された翌月に意思決定しました。

Question 12:
決断としては正しかったわけですね。

 非常に良かったです。中古本の取り扱いを止めた直後の売上高はへこみましたが、いまでは、新刊・中古両方取り扱っていたピーク時に比べて数倍の規模に拡大しています。

返品率は驚異の1%以下

Question 13:
仕入れ関連ではどのような特色がありますか?

 返品率の低さが挙げられます。一般の書店の返品率が30〜40%に対して、当社は1%以下となっています。仕入れた新刊本が何かの原因で破損したり、誤発注などがあるためになかなか返品率はゼロにはなりませんが、入荷した新刊本は基本的には全て売り切っています。これが当社の特色の1つとして挙げられます。もう1つ挙げるとしたら、一般の書店は全巻を売るという発想があまりないために、新巻に偏りが出てきます。現在も連載が続いている漫画ですと一般書店ではスペース上の制約もあって、全巻を陳列することは物理的に難しいようです。これに対して、当社は1巻から最新巻まで全てを取り揃えて販売します。一般書店ではあまり販売しないような1巻とか2巻などを始めとして全巻を販売するという点が特色に挙げられます。

Question 14:
通常、仕入れてから販売までの期間はどれくらいですか?

 作品にもよりますが、例えば売れ筋の1つである「ワンピース」ですと、100セット仕入れて、即完売するといった状況が続いています。
 実は、全巻一気に入荷するのではなく、1巻を100冊、2巻を100冊というように各巻を注文して仕入れています。これらを全巻に仕分けして出荷します。いわば、1個、1個、部品を仕入れてきてそれを完成品にして販売するという商売をしているわけです。大手はこうした作業をまねることはできないでしょうね。

Question 15:
この作業は人海戦術ですか?

 そうです。中古本のときはこうしたことはなかったのですが、新刊になってからは手間をかける必要が出てきて、現状、この手作業が参入障壁を高めることに繋がっています。
 書籍にはISBN(国際標準図書番号)コードが検索・管理するために1冊ごとについていますが、ここには「全巻」という概念がありません。ですから、出版社、出版取次、書店などでは全巻を対応する仕組みができていないのです。当社は「単巻」を集めて「全巻」にするというパッキング作業を行っているともいえます。

Question 16:
今は対応できても、もっと事業規模が拡大していけば、成長のボトルネックになりませんか?

 確かに、今は処理できていますが、仕分け作業は今後の課題の1つともいえます。ただ、全巻への作業は現在、数名で対応しており、効率が極めていいので、当面、人海戦術は続きそうです。
 もう1つ課題があります。現在、当社は5,000タイトルを扱っていますが、そのうち2,000タイトルほどが、今も連載されている漫画だということです。ですからほぼ毎日といっていいほど、なにかしらの新巻が増えていきます。こうした新巻を「全巻」の中に組入れて、サイト上の修正や金額の変更などのメンテナンスを毎日やらなければなりませんので、だんだんと業務上重くのしかかってきているのは事実です。こうした作業のシステム化は可能ですので、現在、準備を行っているところです。

Question 17:
これまでのお話を伺うとあまり在庫を抱えるということでもないようですね。

 在庫はゼロではありません。人気作品ですと、10セットとか20セットを抱えています。月に1回ぐらいの頻度で売れる作品は1セット分を在庫として抱えています。返品率は1%程度なので、在庫リスクは小さいと考えています。

新サービスを矢継ぎ早に提供

Question 18:
配送面にフォーカスしますと、「出前館」という新しい仕組みを立ち上げていますが、対象地域はどのようなところですか?

 「出前館」はちょうどラーメンの出前と同じ感覚で、「今、こういう漫画を読みたい」と思えば、すぐに手に入るような感覚です。物流センターは現在、千葉県市川市にありますが、ここから配送するとどうしても1日程度時間がかかります。そこで、新小岩(東京都葛飾区)に倉庫を構え、そこから試験的に、都内7区(江東区や台東区など、主に東東京エリア)を対象にサービスを開始しています。注文を受けてから、1時間以内とか30分以内で届けています。今のところお客さんの声は、クレームではなく、むしろ「本当に来てくれるんだ」という驚きの声が多いようです。

Question 19:
もう少し中期的な展望から伺いますと、エリア拡大を目指しているのですか?

 そうですね。東京都内の網羅を考えています。また、最近は、レンタルDVDと同じような発想で、「レンタルコミック」というビジネスが散見されるようになってきました。
 当社は新品で、かつ全巻の販売ですから、漫画を買う側からみれば一番ハードルが高くなります。そこで、価格をどう設定するかはともかく、「レンタルで届けて、回収する」、まさにラーメンの出前、その後に器の回収といったようなことを「出前館」ができるよう準備を進めているところです。

Question 20:
これも切り口は全巻を対象にしたレンタルですか?

 そうです。僕も本は買いたいですが、50冊や100冊もの本を購入しても置くスペースが限られるので、なかなか沢山は購読しにくいですが、レンタルだったら注文しやすいなぁと考えています。

Question 21:
ところで、市川市にある物流センターの配送先はどのような地域が対象ですか?

 インターネット販売ですから、地域は問いません。漫画のすごさは、海外からの注文が毎日あることです。海外向けの販売額は、全体の1%を占めています。アクセス数はその倍の2%です。

Question 22:
海外からのアクセスは、どのような地域が多いのですか?

 全世界といってもいいくらいで、欧州、アジア、オセアニア、アメリカなどを始め、中近東などからもあります。

Question 23:
海外の読者は翻訳版の漫画本を購読しているのですか?

 いいえ、日本語の漫画です。海外からの購入者の半分は日本人で、日本語に接したいという動機で購入しているように見受けられますが、残りの半分は全くの外国人です。
 当社のサイト自体が日本語ですから、当社のサイトを見つけ出すだけでも、外国人は非常に労力を費やしていると思われます。こうしたハードルを乗り越えて電子メールとはいえ、オーダーをしてきます。送料や振込手数料などを考えると、購入単価はかなり割高になるはずなのに、注文があるということは、漫画市場のニーズが世界に相当ある、と捉えることができると思います。
 そこで、当社が自ら海外市場に進出して、漫画本を売りたいと考えています(注:取材時点ではまだ計画段階であったが、その後、中国語のサイトを台湾市場で立ち上げ、実質的には海外進出を果たし、販売を開始している)。

Question 24:
漫画全巻ドットコムの購買層や販売単価をお聴きしたいのですが・・・。

 販売平均単価は、半年前は13,000円程度でしたが、今は15,000円を超えてきています。これは全巻の巻数が日々増加していることが影響していると考えています。購買層は、男性6割に対して女性4割で、徐々に女性の比率が高まっています。年齢層では32〜33歳が平均ですが、40代、50代も結構多いようです。一方、漫画のイメージからすれば、10代が多いように受け取られそうですが、「全巻」ということで単価が高いことや、比較的時間に余裕があるので、1冊、1冊で購入するといった安い買い方をしているとみられ、当社の購買層としては少ない部類に入ります。

Question 25:
話が少し戻りますが、読者は漫画を読めば、中古本としてリサイクル店などに売るように思われるのですが、その点はいかがですか?

 当社と似たようなサイトが10ほどありますが、基本は中古本を扱っています。最近、ブックカバーを売り出しましたが、これを買うお客さんが結構多いことからみて、当社の顧客はコレクションというか、蔵書志向が強いように見受けられます。一番多い全巻は手塚治虫さんの400冊で、単価は27万円ほどしますが、月に1〜2セットは確実に売れます。これはまさにコレクション的な買い方の典型例でしょうね。このほか、子供さんへのプレゼントなどが多いようです。

Question 26:
販売時の資金回収方法は、海外は振込みですが、国内は一般に代金引換やクレジット、銀行振込みですか?

 そうです。販売後の決済によっても資金回収が滞ることはありません。また、ユーザーが個人ですので、特定ユーザーに偏った売り方とはならず、その点は心配していません。

Question 27:
御社のサイトをみますと、メインは当然、紙媒体のコミックで、電子コミックの販売も行っているようですが、この分野については今後どのようにお考えですか?

 電子書籍市場は既存の書籍市場と比べて成長が著しいので、いつかはこの市場に参入したいと考えてきました。そこで、年内を目処に携帯電話による電子コミックの配信を計画しています。
 携帯電話による電子コミックのサイトはすでに100ぐらいあり、現在、寡占化が進みつつあります。当社は、紙媒体のコミックも買えるし、電子コミックも購入できるという、2者を組み合わせたハイブリッド型サイトという点に特長を持たせる方針です。このようなサイト運営を行っているところがないことが背景にあります。
 電子コミックの配信はパソコン、モバイルが考えられますが、電子コミック市場の95%ぐらいが携帯電話経由で読まれている実情を勘案して、この分野からスタートさせます。当社の売上全体に占めるパソコンからの販売比率が85%、携帯電話のそれは15%ですが、携帯電話関連はプロモーションを行わずに比率が高まる傾向が顕著になっています。3年以内には1対1まで携帯電話関連の比重を高めたいと目論んでいます。ちなみに、当社では楽天のショッピングモールにも出店していますが、ここではパソコンからの購入6に対して携帯電話は4となっていますので、かなりのスピードで携帯電話のウェイトが高まっていくと確信しています。

Question 28:
販売面からみた最近のトピックスとしては、電子コミックの販売のほかに、漫画雑誌の定期購読ビジネスもあります。この事業の概略をお聴かせください。

 コミック雑誌の定期購読に関する事業は以前から興味がありました。コミック市場は5,000億円あり、そのうち雑誌関連と単行本がほぼ同程度の2,500億円ずつですので、一定の市場規模がある雑誌市場に参入したいと考えてきました。
しかし、当社は、店舗がないので、送料をどうするか、受注して1冊、1冊発送していたのでは割が合わないのです。また、定期購読するにしても、新春特大号とか付録がついたりしていると価格が上がるのでいわゆる「定価」がありません。出版社サイドから事前に価格を開示してもらえないとはいえ、当社の判断で適当な販売価格を設定することは再販価格の問題にも影響してくるので、どうしたものかと考えていました。その解決策としてプリペイドカードのような販売形態を企画しました。
 例えば、定期購読者に1万円入金してもらえば、それをもとに読者に1万ポイントを付与します。読者は1冊購入すると送料込みの金額相当額のポイントを消費し、これがゼロになるまで継続して購入できる、ということで定期購読の仕組みが構築できました。
 今は、試験的に事業をスタートした段階です。外出を好まないような読者とかコンビニや書店まで行かずに、発売日に自宅で手に入れることができるならば、読者に喜ばれるのではないかと期待しています。こうしたサービス提供は、全国の書店数が減少傾向を辿っていることもあって、ニーズがあると見込んでいます。

Question 29:
電子コミック、定期購読サービスなど販売チャネルに広がりが出てきている印象を受けます。

 一般の本屋さんのように本を売るだけでなく、コミックを読む環境とか雰囲気を提供したいという思いが底流にあります。それらのサービスを提供するには音楽であったり、書籍に付随するような関連商品であったりしますので、商材という点でも広がりが出てきます。具体例を1つ挙げますと、本棚があります。例えば、「こち亀」(「こちら葛飾区亀有公園前派出所」)とか「ゴルゴ13」を一気に購入するような読者は、それらを収納する本棚が必要になってくるでしょうから、本棚ごと販売していこうという考えに広がってきます。

海外進出は台湾でサイトの立ち上げが実現化、次は海外市場に出店を計画

Question 30:
収益面についてお聴きしたいのですが?

 09年3月期の売上高は前年度比1.8倍の5.4億円、今期は倍近くを目指しています。伸び率でいえば、さすがにここまで届く公算は小さいですが、それでも大幅に伸びています。売上高のけん引役は大幅に伸びた出荷数ですので、数量効果が最大でした。利益も黒字です。

Question 31:
この不況下で、売上高が大幅に伸びていることは、特筆されるべきだと思います。3年ぐらい先の中期展望をした場合、どのような企業像を描いておられますか?

 これまでお話しましたようなレンタルコミック、電子コミック、コミック雑誌の定期購読などの事業が拡充していると思います。そして、海外進出も実現しているでしょう。小学館さんや集英社さんなど大手出版社さんは、最近フランスに進出し、海外での販売に注力する傾向が出てきています。また、アニメ、マンガのユーザーも世界レベルで広がっています。こうした潮流を踏まえると、「売る人」が欠かせないと考え、その一役を担う企業になりたいと考えています。サイトでは台湾に進出しましたが、店舗も台湾やフランスなどに構えて行きたいと考えています。

 特色のある事業展開を大変興味深く伺いました。今後、一段のご発展を期待しております。本日はご多忙の中、有難うございました。